007

 シドのいる魔族領までの道のりは長かったが、オレの働きによって行程は順調に進んでいた。今は道中の林で、テントを張って一息ついているところだ。
 しかし我ながら見事な働きぶりだった。
 ときには、山中で襲いかかってきた盗賊を、アッサムが攻撃を弾いた隙を突いてイカせたり。

「あひんっ! こんなのはじめてぇぇん!!!」

 ときには、オレを盗もうとした村人をイカせたり。

「のぉぉおっ、おら、おらぁぁ! いぐぅぅううう!」

 いやぁ、犯す人材には困らなかったぜ。
 しかしこれほど貢献しているオレを、アッサムはたき火越しに辟易とした表情で見てくる。

「レイ様、こいつ出発時より大きくなってませんか……?」
「あぁ、彼は異能《ユニーク》種なのもあって、分裂しないようだな」
「どれだけ精気吸ったら満足するんだよ……」

 町につけば、ちゃんと用意された小瓶に体を分けてやってるというのに、何という言い草だろうか。
 旅費に困らず、旅を続けられているのは誰のおかげだ?
 何だ? 最近じっくり構ってやれてなかったから、妬いてるのか?

「やめろ! にじり寄って来るな!」
「ははっ、すっかり仲がよくなったな」
「これのどこがですか!? ……だから、来るなって! お前、俺がイヤがってるの分かるだろう!?」

 分かってるよ、イヤよイヤよも好きの内、だろ?
 ゼリー状の体を伸ばしてアッサムの褐色の肌に触れる。

「うわっ! ばかっ、場所を考えろ……!」

 それは場所を替えればいいってことか。アッサムも随分素直になったもんだ。
 しかしシドの魔族領に近づき、魔族や魔物がいつ現れても不思議ではない状況なので、これ以上の接触は素直に控える。

「…………本当にこういうところは聞き分けいいよな、お前」

 いいところで邪魔が入るのはイヤだからな!
 そんなことよりオレはアッサムに聞きたいことがあった。
 じっとアッサムの腕を見つめる。

「な、何だよ……」

 あれは盗賊と相対したときだった。
 剣戟の最中、アッサムは確かに身を守るため硬化魔法を使い、盗賊の攻撃に耐えたのだ。
 オレは是が非でもその魔法が知りたい!
 だって自分の体を硬化出来たら、もうヘビとか刀剣の柄に頼らなくて済むんだ! 上手く想像通りに固められるかは、試してみないと分からないけど! いいや、そこは死ぬ気で作り上げてみせるから!
 しかしどうやって硬化魔法のことを伝えればいいものか……。
 オレは試しにゼリー状の体を伸ばして剣の形を象った。角が丸くなってしまうのはご愛敬だ。どうしてもゼリー状だと、形を固定するのが難しい。

「何か私たちに伝えようとしているのか? こんな風に形を作るのは、はじめてだな」

 すぐに意図を察してくれるレイ大好き。

「ろくでもないことのように思えますが……」

 それに反してアッサムはどうか。まだまだ調教が足りてないようだな。
 ギリギリ剣の形に見える体をアッサムの腕に向ける。
 咄嗟にアッサムは腕を遠ざけるが、オレは腕に弾かれたように反対側へ体を動かした。
 腕に剣を向けては、弾かれる動作を何度も繰り返す。
 その意味に気づいてくれたのは、やはりレイだった。

「アッサムの腕に、剣が弾かれているのを表現したいのか?」

 そうそう。
 試しにレイが自分の腕を前に差し出してくるが、オレは体を左右に揺らして違うと告げる。

「やはりアッサムの腕に意味があるようだな」
「ですが……俺の腕が何だって言うんです? 盾がなければ剣を弾くことなんて出来ませんよ」

 そうなんだけど! そうなんだけど……!
 例え硬化魔法を自分にかけたところで、剣筋を防げるわけではない。実際に体で剣を弾けるのは、ゴーレムや硬い鱗を持つドラゴンぐらいだ。
 それでも硬化魔法を使うことで、アッサムの言う通り盾越しに弾けるようになる。オレが伝えたいのはそこ……!
 助けて、レイ!
 どうにか意図を汲んでもらえないかと頼みの綱であるレイに視線を集中させる。レイは顎に手を置いて考え込んでいる様子だった。

「ふむ、攻撃を弾く動きか…………もしかして、硬化魔法か?」

 レイ愛してるぅぅううううう!!!!!
 頷くように縦に大きく体を揺らすと、レイも当たるとは思っていなかったらしく大きな声をあげて笑った。

「ははは! どうやら当たりらしい」
「硬化魔法ですか?」

 相変わらずアッサムはピンと来ていないようだ。
 どうでもいいから、今すぐオレに硬化魔法を教えろ。

「前に話したことがあっただろう? 私のゴーレムの魔方陣が改変されていたことを」
「はい……ですが本当に、このピンクスライムがやったんですか? 失礼ですが、レイ様の思い違いでは?」
「いや、ピンクスライムが家に来たとき、わざとゴーレムの横を通ったがピクリとも動かなかった。信じられない話だが、確かに此奴に書き換えられたんだ。……もしかしたら戦いに備えて、硬化魔法を覚えたいのかもしれん」
「攻撃用にということですか? そんな……お前……」

 感激したように輝く瞳をアッサムが向けてくる。
 いや、オレはゼリー状の体を固めて肉棒を作りたいだけだ。

 第一、物理無効な上、相手の顔に取り付いて呼吸を止めれば息の根を止められるピンクスライムが、わざわざ攻撃用に硬化魔法を覚える必要はないだろう。
 そりゃあドラゴンや大きい個体が相手では無理があるが、そんなのには硬化魔法を覚えたところで逆立ちしたって勝てねぇよ。
 しかしすっかり勘違いしているアッサムは、上機嫌で硬化魔法を教えてくれる。

「今までは単に腹が減ったから、盗賊相手にも取りついたと思ってたんだが、実は戦いに参加してくれてたんだな……。よし! そういうことなら硬化魔法を教えてやるぜ!」

 よしきたっ!!!
 遂に念願叶うのかと思えば、感慨深い。
 長かった……これで代用して物を使うこともなくなるんだ。
 あぁ……オレの強姦ライフが、やっと日の目を見る。

「──どうだ? 分かったか?」

 アッサムが懇切丁寧に魔力の流れまで説明してくれたおかげで、すぐに硬化魔法を理解することが出来た。
 喜んで体を弾ますオレに、アッサムも満足げに頷く。

「今まで金づるだなんて言って悪かったな。今日からは、お前も俺らの仲間だ!」

 次からは存分にオレの肉棒で犯してやるからな! 期待しててくれ!
 記憶が確かなら、ここからシドの魔族領に入る手前にも、人間の町があったはずだ。二人のことだからきっとそこで最後の宿泊をするだろう。
 くっくっく、楽しみにしてろよ。

「……しかし最近野宿が続いてるせいか、背筋に寒気が走りますね」
「疲れが溜まっているのだろう。ピンクスライムのおかげで金はある。次の町では、ゆっくり休もうじゃないか」
「そうですね」

 思惑通りの会話をする二人に笑いが止まらない。
 折角だから肉棒を作る練習はこっそりして、宿屋で二人を驚かせてやろう。
 心なしかヘビが残念そうにしてるように思えるが。
 もうキミは十分に役立ってくれた。次からは好きなときにオレの体に潜り込んでいいから……。
 そうヘビに語りかけると、即行でヘビはオレのゼリー状の体に潜った。こいつも大概現金だな。

「すっかりあのヘビは、ピンクスライムに懐いてますね」
「ピンクスライムは他の生物に懐かれやすい性質《たち》らしい。私たちの馬も彼に懐いているだろう?」
「……一回犯されてましたしね」

 体で語り合っただけさ。


◆◆◆◆◆◆


 町に入るときは、いつもピンクスライムだとバレないように布を被せられる。
 一回盗まれそうになったしな。返り討ちにしたけど。
 林で話していた通り、シドの魔族領手前の町で、レイたちは休むことにした。
 くっくっく、オレの肉棒が火を噴くのも時間の問題だ。
 象ったゼリー状の体を固めることは、呆気ないほど簡単に出来た。角張った形は再現出来ないものの、肉棒には関係ないことだ。ふははははは。

「おいこら、変な動きをするな! ピンクスライムだってバレるだろっ!」

 ただでさえ体も大きくなってるんだからな、とアッサムがぼやく。
 しかし今はそんな彼の小言も小鳥のさえずりのようだ。

「では、しばらくこの宿でゆっくりしよう」

 レイは二人同室で部屋を取ると、まだ夕方なのにもかかわらず早速ベッドに横たわる。
 彼らが同じ部屋なのは、一重にレイの身を守るためだ。まだ年若いアッサムに、レイは町に出ることも勧めるが、アッサムがレイの傍を離れることはなかった。
 性欲はオレが処理してるしな!
 ぷるぷるとゼリー状の体を揺らしながらレイが寝るベッドに近づく。だが、すぐには手を出さない。彼らにも休息は必要だからだ。
 アッサムもオレがタイミングを見計らうことを承知しているので、気にせず横になる。

「何かあったら起こせよ」

 はいはい、とオレは体を縦に弾ませた。
 ゆっくりお休み。
 そして起きたらハッスルしようぜ! と、二人の寝顔を見守る。
 ピンクスライムに転生してから、こんな風に誰かの傍に寄り添うことが多くなっていた。前世ではめっきり減っていたことだ。
 停戦協定の交渉役に名乗りを挙げたのも、戦いにつぐ戦いの悪循環から抜け出したかったからだったのを思い出す。停戦協定が頓挫したことで、結局戦いの中で死ぬことになったが。

 魔族と人間では、相容れぬところもあるが、だからといって必ずしも反目し合うべきだとはオレは思っていない。
 個体の力では魔族が勝る分、力任せの脳筋が魔族に多いのは事実だ。しかしその分、バランスを取るかのように、魔族は人間に比べて圧倒的に数が少なかった。
 それでも人間と対等に戦えていたのは、指揮を取る立場にいる者の手腕あってだろう。魔王はその点で、特に秀でていた。
 男を犯してる暇があったら人間を殺せと怒鳴られていた日々が懐かしい。
 よく、殺したら犯せなくなるじゃないかと、死姦は趣味じゃないと言い返したものだ。
 魔族にものんびりとした平和が好きなヤツがいることを、人間も知ってくれればいいんだがな。

 オレが見張りをしていることで安心したのか、二人はすっかり健やかな寝息を立てていた。
 何の因果か、レイは前世のオレに犯され、今世のオレにまで犯されるという数奇な人生を送っているものの、オレに対する警戒心は全くなくなっている。その点についてはアッサムも同じか。
 命までは取られないことを知っているからだろう。前世から犯す相手は殺さないのがポリシーだったので、今世の転生は中々オレの意を汲んでくれている。

 しかし無防備な寝顔を見ていると、性欲が湧いてくるな!

 ピンクスライム的に言うと、腹が減ってきた。
 体が大きくなるにつれ食欲も増しているようで、最近ではレイとアッサムの一回分の精気を摂取したぐらいでは少し物足りない。
 だが今は我慢のとき。
 空腹が最高の調味料になるように、精気も腹が減っている方が、吸収したときの満足感は大きかった。
 魔族だった前世の記憶を引き継いでいる分、オレには野生の魔物にはない忍耐力がある。腹が減ったからといってすぐに跳びつかない。待つべきときを心得ているからだ。

 ふふふ、何と心躍る時間か。
 肉棒の準備は出来た。後は二人をズッコンバッコン犯すだけだ。
 安心して眠る彼らににじり寄る想像をするだけで、体の芯が熱くなるように感じる。あぁ、楽しみだ。誰でもないオレの肉棒で啼《な》かせられるのだから。
 責める手順を考えるだけで、いくらでも時間は潰せた。

 どれくらい時間が経ったのか、辺りを見回せばすっかり夜の帳は下りていた。
 窓から見える外は真っ暗だ。街灯の光も消えていることから、結構な時間が過ぎていることが窺える。
 なら、そろそろいいかな? とゼリー状の体をゆっくり伸ばす。
 ふふっ、やっとだ。やっと今世でもオレの肉棒を披露することが出来る!

 待たせたな! オマエらっ!!!

 場所を変え、意気揚々と二つ並べられているベッドの真ん中に陣取った。ピンクスライムの体の中心はそこで固定し、腕を伸ばすようにレイとアッサムに向けて体を広げていく。
 オレの体が色白なレイの足を撫でると、少し彼は身じろいだ。

「ん……」

 片やアッサムはゆっくりと瞼を上げる。チッ、起きるのが早いな。

「ぁっ、お前っ! むぐっ!?」

 もう少し寝込みを襲うシチュエーションを楽しませなさい。
 鼻を塞いでしまわないよう気をつけながら、アッサムの口を覆う。以前のことがあるので、彼がオレを飲み込むような愚行は再現されなかった。
 でもまぁ起きたのなら起きたで、楽しませてもらおう。
 レイのズボンの裾から侵入させた体をゆっくり彼の中心へ向かわせながら、もう片方の体で、逃げられないようアッサムの股間を鷲掴む。

「んぐぅー!」

 ビクンッと大きく背を反らせて跳ねるアッサムは何度見ても飽きない。
 そうだ、少し試してみるか。
 アッサムの股間を握ったことで主導権は得られたので、口を覆っていた体をズラしながら、先端に少しだけ硬化魔法をかける。ふふふ、こうすることで舌の形を再現出来るのだ!

「はふっ……ん、れろ……な、に……? んんっ」

 よし、上手くいった! 想像通り先端に硬さを持たせることに成功する。
 作ったピンク色の舌をアッサムの口に入れれば、彼は自然とそれを舐め回した。アッサムからしてみれば、突然飴が入ってきたような感じなのだろう。

「ちゅっ、れろ……れろ……ぅん、何だ、これ……?」

 硬化したオレの体だとはすぐに理解出来ないのか、アッサムは先端をしゃぶり続けた。
 今の内にと、寝ているレイの体を撫でる。
 ズボンの中を這い上がっていく道中は、トンネルをくぐってるような気分だ。
 幅のあるトンネルを進むと、下着という新たなトンネルが出現する。
 しかしレイは比較的ゆったりとした下着を身につけているので、そこもすんなり通過することが可能だ。
 すぐに弛緩したレイの肉棒が見えた。服を脱がさず、裸体を観察出来るピンクスライムって素敵。視点を変えれば、レイの服の下で動いてる自分を見ることも出来る。
 全裸でアヒアヒ啼《な》かすのもいいが、着衣エロをオレは推していきたい。
 これはおいしそうだなと、ゼリー状の体でレイの肉棒を包み込むと、流石にレイも目を覚ました。

「ん……んん? あぁ……腹が減ったのか……?」

 それもある。しかしレイはオレの行動に慣れ過ぎじゃないか?
 そんな余裕はすぐに消し飛ばしてやるけどな! ヌルンッと二人同時に後孔へ体を挿入する。

「はぅっ……ぅぅっ、ん! 何度、やっても……この、感覚は、慣れない、な」
「ぁく……ぁ……レイ、さま……」

 レイが起きたことに気づいたアッサムがレイに目を向けるものの、すぐに顔を反対側へ反らした。こんな状況に陥っている自分に羞恥を感じたらしいが、もう何度目だよと思う。
 恥ずかしがってくれると感度もよくなるから構わないけど。
 そして二人の後孔を埋めるピンクスライムの質量が増す度に、オレはワクワクを止められない。

 さぁ、お待ちかねのメインタイムのはじまりだ……!