003
「あひっ……あん! あっ、あっ、あぁぁ! いぃ……くぁあっ!」ズチュズチュと指を抜き差しする淫らな音が立てながら、おっさんは顔を赤く染め上げていく。
すっかりオレの進入を許してしまったおっさんは、四つん這いになって己の指で快楽に耽っていた。
昨日は蕾に触れるのにも抵抗があったように見えたのに、一度後ろでイク快感を覚えたせいか、今日は動きに迷いがない。伸び放題のヒゲにヨダレを垂らしながら、三本の指を引っ切りなしに動かしている様は淫乱そのものだった。
おっさんの気分が高まっているおかげか、射精前にもかかわらず精気の気配が漂ってきた。オードブル代わりかな。
「あぁ……んっ、あっ! あっ! あんんっ!」
淀みない喘ぎ声に、オレも楽しくなってくるが、どこか物足りない。
やっぱ肉棒がないのはキツいよ……。
このっ! 体に漲《みなぎ》る! 情熱を! オレは解き放ちたいんだ……っ!
でも今のオレにあるのは、ぷるるんっと弾むゼリー状の体だけ。
何故か上にはヘビが乗ってるが…………コイツでも使うか。
おっさんも指だけじゃ物足りなくなってきてるだろ。
ヘビをピンク色の体で包み込んで伸ばす。はじめて会ったときは抵抗してきたものだけど、今となってはヘビもされるがままである。本当、コイツどうしたの?
トコロテンがそんなによかったのだろうかと、ついでにヘビの小さなアナルにもゼリー状の体を挿入した。
するとヘビはもんどり打って果てた。放出された微量の精液をおいしく頂く。
「ぁ……ぁあ……なん、だ?」
顔から突っ込んでしまうとヘビも苦しいので、ヘビの尻尾を持っておっさんの体を改めて這った。オレの新たな動きに、何をする気だとおっさんがこちらを見る。
「おい、それ……っ! 待てっ、そのヘビ、どうする気だ!?」
挿入する気です。
安心してくれ、ちゃんとヘビはオレの体で包み込んでるから。
「待て! やめろ! そんなもの挿れ……っ……ひぃぃ!」
尻尾がちょっと入ったぐらいで大袈裟な。
オレはおっさんに奥の方で感じる恍惚を教えてあげたいだけだ。本当は、硬くて太いので息が止まるぐらいガンガンに責めたいところなんだが、ないものねだりしててもはじまらないからな。
「ふっ……くっ……ぅぅ」
おっさんは蕾を絞ってヘビの進入を防ごうと試みる。しかし既にオレのゼリー状の体が中に入ってる状態なので意味をなさない。
多少抵抗はあるものの、ヌルヌルとヘビはおっさんの直腸を進んだ。
「ひぅ……ぃ……こわ、い……っ」
おっさん……もしかして泣いてる?
外に残ってる体を伸ばして、おっさんの様子を窺う。
為す術がないことを悟ったおっさんは、グレーのヒゲをヨダレと涙で濡らしながら泣いていた。
いい年して泣くなよ……多分、三、四〇年は生きてるだろ?
だがまぁ、泣き顔は嫌いじゃない。むしろ征服欲が満たされるから好きだ。もし今の体に肉棒があったら、完全に勃起してた。
あぁ、肉棒欲しい……ぐすん。
「ぅぐっ……ぁひ……ぃ……い、いたっ、痛い……っ!」
おっと、肉棒じゃないから加減をミスったか? いや、こんなもんだな。
前世の肉棒の長さを思い出しながらヘビの挿入を止める。
ヘビは昨日食べたご飯も消化し終わって、太さはおっさんの指三本もない。慣らすにはちょうどいいぐらいだろう。
ズルッ。
「ひぃぃいい! ぅあっ……ぁ……やめ、やめてくれっ……いやだっ、こわっ……いいぃぃ! ひぅ! うっ……」
自分では加減出来ない挿入に恐怖を煽られているようだ。
でも……これがよくなってくるんだぜ?
ヘビをズルリと抜き出しては、また挿入する。最初はゆっくりと、そして次第に挿入のストロークを短くしていった。
当のヘビはイッて失神してるのか、全く動く気配がない。
「あぐっ……あっ……いやだ……奥は、いや……くっ……ぅぅん! あっ……はっ……あぁん! あっ、あっ! いや……なん、でぇ……?」
イヤだという訴えの合間に、喘ぎが入りはじめたのを聞いてほくそ笑む。
おっさんも自分が感じはじめたことに戸惑っているようだ。
ふっ、忘れてないか? オレはゼリー状の体に、催淫効果を持つピンクスライムだぜ? 体の外だろうが、中だろうが快楽の虜にしてやるよ!
オラッ、ヘビを突っ込まれて感じやがれ! 快楽落ちしろ!
「ひぅん! やぁっ……! あっ、あっ……! いや、いやだぁ! そんなっ、奥、頭が、おかしく、なるぅ! あっ、あぁ! いいっ、あぁぁ!」
ヌチュ、ズチュ……ッ! 度重なる抽送に、オレの体には気泡が出来ていた。
順調に快楽にのまれているおっさんに、気分は上々だ。
「あひっ! あぁん! あっ、あっ、おくぅっ……あぁ!」
催淫効果も手伝って、今やおっさんは自ら腰を振っている。
その腰の動きに合わせて、奥へヘビを挿入したときだった。
ヘビが気を取り戻したらしく、反射的に体をうねらす。
「あひぃぃんん!」
今までと違う動きで内壁をなぞられ、おっさんは一際高い声を上げた。
ヘビ、よくやった……!
褒められたのが伝わったのか、喜ぶようにヘビはまた体をうねらす。
「おく……っ……あぁぁ! あっ! おかし……なるぅ……っ! あっ! あぁ、お尻、おかしく、な……っ……あぅぅうんん!」
呂律も回らなくなったおっさんは、果てた。
しかしドライでイッたようで射精はない。それでも濃い精気が溢れ、オレは満たされていく。あーおいしい。
でもまだだな。
「あっ! あん! まっ、待って……ひぁぁあん!」
腹に余裕があるのもあって、ヘビの抽送を続ける。
射精なしでイッたということは、今おっさんの体は最高に熟れてるってことだ。
体を少し撫でられるだけでも感じるぐらい敏感になっているに違いない。
そんな状態を、オレが放置するわけねぇだろ。
潤滑油代わりにおっさんの中に入れた分とは別に、オレのピンクスライムとしての体の大半は依然として形を保っている。
こうなれば総攻撃待ったなし。
総力戦だ! と言わんばかりに、オレはおっさんの下半身に張りついた。
おっさんの竿をぐるりと一周し、亀頭に吸いつく。もちろん尿道口を責めるのも忘れない。
「ひっ、ぁぁあああ! イクっ、また、いくぅぅうっ! あぁぁあああ! も、もう許し……くっ、あぁん! あん! あっ! 止まらなっ……!」
陸に打ち上げられた魚のように、おっさんは地面の上を跳ねた。
しかしそんなことではオレからは逃れられないぜ。
既にベトベトになっている場所で、心機一転、おっさんの睾丸を体で転がす。
「あひん! はぁぁ、もうっ……あっ! あぁっ!」
いい声だ。
痙攣を起こし、掠れるおっさんの声に限界を察知しながら、オレは舐めるようにおっさんの下半身を動き回った。
「ひんっ……ひ…………」
おっさんが気をやり、失神した後は体中で放たれた精気を頬張る。
解放したヘビは、またオレの上へ登りとぐろを巻いた。君がそれでいいって言うなら、オレは止めない。
しかし……おっさんは気づいているだろうか? オレがあえて秘部ばかり責めていたことに。
はじめて会った人間だから、存分に後ろを開発してやろうと思ったんだよな。
流石におっさんが自分の手を使うことなくイキ続けたのは、オレも予想外だったが……。素質あり過ぎだろ、おっさん。
気を失ったおっさんは、片方の頬を地面につけて倒れている。快感の責め苦から逃れたその表情は安らかに見えた。
決めたよ、おっさん。
オレ、絶対に肉棒を手に入れる。
そしてオレ自身の体で、アンタを悦ばしてやるんだ。
どうせもうオレなしじゃ生きていけない体になってるだろうしな。
◆◆◆◆◆◆
あまりにもおっさんの顔が汗やヨダレやらで汚いので、流してやろうと水を汲みに行くことにした。
ただ水をピンクスライムの体内に入れてしまうと、水がたちまち催淫効果のある媚薬になってしまうので、器になるような大きい葉っぱを採取する。
採取した葉っぱを折ることぐらいは、このゼリー状の体でも出来るからな。
汲む水は、昨日動物を犯しまくってたときに、水場を見つけたので問題ない。
オレが葉の器を持って水場に姿を現すと、何故か動物たちがすり寄って来た。
何だオマエら? また犯されたいのか?
基本的にピンクスライムは、他の生物を殺すことがないので、動物や魔物からは無害認定されている。ヤツらがオレを襲ったところで、催淫効果には抗えないしな。
それにこんな森の中で、おっさんみたいにアンアン言い出したら、他のヤツらの餌食になるだけだ。おっさんが無事だったのは、周辺に人間を襲う魔物がいなかっただけに過ぎない。
オレが散策した限りじゃ、この辺には動物しか見当たらなかった。
葉の器に水を汲んでいる合間にも、見覚えのある動物が一匹、また一匹と近づいてくる。オマエらは、どれだけ快楽に飢えてるんだよ。
ピンクスライムがこれほどまでに動物から懐かれるとは思わなかった。
人間や魔族に見つかったら即行で捕獲されて売り飛ばされるから、生態に関しては案外謎が多い。
しかし悪いな、オレは今腹いっぱいなんだ。
動物たちの相手をしている余裕はないので、水を汲んでさっさと離れる。
戻るとおっさんは目を覚ましていた。
「…………」
どこかまだぼんやりして座り込んでいるおっさんに水を運ぶ。
顔にぶっかけてやろうかと思ったんだが、起きてるなら好きに使えと、葉の器をおっさんの前に置いた。
「君……大きくなってないか?」
おっさんは水より、オレのことが気になるらしい。折角汲んできたのに。
そんなに見つめられてもピンクスライムはこれ以上赤くなったりしないぞ。
……おっさんが気にするほど急激に体積が増えた感じはしないんだが、オレが思ってる以上にデカくなってるのか? じゃなきゃ、おっさんもここまで観察してこないだろう。
「…………もしかして、異能《ユニーク》種か?」
おう? オレ異能種だったのか?
言われてみればそうかもしれない。ストンと腑に落ちた答えに、頷く首はないが、代わりに体がぷるんっと弾んだ。……うん、オレやっぱ大きくなってるかも。
異能種は、突然変異で生まれる特別な個体だった。
通常の魔物よりも体が大きいのが特徴で、それに応じて能力も上がる。
オレの出現時、分裂元になるピンクスライムがいなかったことを鑑みるに、もしかしたら本来分裂するところで分裂出来ず、異能種として生まれ変わったのかもしれない。
しかもオレ自身も分裂することなく依然として体積を増していっていることからも、異能種である可能性は高かった。
……あれ? じゃあオレ、繁殖出来ないの?
異能種は突然変異で生まれるが、大概そういう個体は子供を残せない。
オレも精気を上限まで吸収しても、ただ体が大きくなっていることを考えると、分裂して新しい個体を生み出すことが出来ないんじゃ……。
マジかよ、なんてこった!
生物としての意義! 子孫繁栄させてくれよ!?
くっ……すまない、大人の玩具職人たちよ、オレではピンクスライムの在庫を増やすことが出来ないようだ……。媚薬なら水さえあれば無限に作れそうだけど。
おっさんは、しばらくヘビを上に乗せてぷるぷる弾むオレを眺めていたが、考えても仕方ないと思ったのか、ようやく目の前の置かれた水に気づいた。
「これ……私になのか?」
自分用ならとっくに使ってるっつうか、わざわざ葉の器に汲んだりしねぇよ。
おっさんのだよ、と伝えるために彼から距離を取った。ほら、オレは使わないから、アンタが使え。
何度か水とオレを交互に見た後、おっさんは意を決して水を飲む。あ、顔の汚れより喉の方が乾いてた? そりゃあれだけ声を上げてたら、喉も渇くか。
水を飲み干したおっさんは、ぷはーっと息を吐く。いい飲みっぷりだな。
「ふぅ、有り難う……と言うのも変だがな。君が変わった個体だというのは確かなようだ。どうだ、私の家に来るか? ここには君の他に魔物はいないが、動物に襲われる危険はあるだろう?」
まさか家に招待されるとは。でもオレ、動物には懐かれてるんだけど。
誘うだけ誘って、結局は売り飛ばすつもりだろうか?
様子を探っていると、おっさんは持って来たスライム壺を持ち上げた。
「これは使わないよ。そもそも、もうこれに入りきる大きさでもないしな。ついて来たいならついて来い。……あぁ、だがイキナリ跳びつくのはよしてくれ」
おっさんも流石にオレが言葉を理解出来るとは思っていないだろう。
スタスタと歩き出すおっさんの背中を見送る。売り飛ばされる心配がないなら、ついていってもいいんだがなぁ。
おっさんは十メートルほど歩くとオレを振り返った。
また少し歩くと振り返る。
…………分かった、分かった! ついて行ってやるよ!
結局、背中に哀愁を漂わせるおっさんに負けて、オレはおっさんの家に行くことにした。