まおと

 家に帰ると、リビングのソファで足を投げ出して寝ている従兄弟の姿があった。
 フェイスラインにそって切られている、まおの傷みのないハニーブラウンの髪もサラサラとソファに広がっていた。
 あどけないまおの寝顔を見ていると、自然と心が温かくなる。

 まおが部屋着にしているTシャツは以前俺がプレゼントしたものだ。
 俺が着ても大きいサイズのTシャツが、まおの体格に合うはずもなく、いつもまおは首から肩を出して着ている。
 寝ているせいか、出る部位は肩に留まらず、まだ毛も生えていないツルリとしたまおの腋を俺に見せた。……ふむ、狙い通り。

 俺は持っていた鞄をその場に置くと、物音を立てないように気を付けながらまおに近づく。
 目の前まで来ても、まおが目覚める様子はない。
 学校で疲れたのか、すやすやと寝息を立てている。

 まぁ、この年の頃は少しはしゃいだだけでも、すぐに眠たくなるからな。
 どうせ夕飯は家政婦さんが用意して、冷蔵庫に入れてくれているだろう。
 まだ時間はあるし……もう少し寝かせてあげようか。

 急ぐ必要はない。
 今日も父親は23時を過ぎないと帰ってこないだろう。
 ……一体、何を考えているのやら。
 仕事の関係か、まおの父親の帰宅時間はいつも遅い。

 それは離婚する前からのことで、今も変わらない。
 こんなに可愛い子が家にいたら、1秒でも早く帰りたいと思うのが親心ではないだろうか。
 従兄弟の俺ですら、友人を放ってまで帰りたくなるというのに。

 仕事だから仕方ないのかもしれない。
 家のことは家政婦さんがいるから心配ないのかもしれない。
 今は俺だっているし、まおが長時間一人になることもないだろう。
 だとしても──。

 俺の中では、まおの父親に対する薄暗い感情が育ってしまっていた。
 俺の母親のように過保護なのもどうかと思うが、放任主義だなんて耳あたりの良い言い訳だろう。
 ……俺が怒ったところで栓のないことだけど。

 肝心のまおが大丈夫だと首を振る以上、俺が強く出るわけにもいかない。
 何より『お兄ちゃんがいてくれるだけでいい』と言い切られてしまっては、どうしようもなかった。

 二人だけの時間が過ごせるのだと思えば、この状況も悪くはない。
 口煩い母親もいないし……俺にとっては素晴らしい環境だ。
 まおにとっては、少し寂しいかもしれないけれど。
 その寂しさは、出来るだけ俺が忘れさせてあげよう。

 寝ている姿だけで、こんなにも俺を幸せにしてくれるのだから……。
 そう思っているはずなのに、自然と体はまおに吸い寄せられていく。
 何か魔力めいたものでもあるんじゃないか。
 自分から近づくというよりは、まおに引っ張られているようだった。

 不思議な感覚に、一瞬そんなバカげた考えが脳裏を過ぎる。
 近づいているのは、自分の意志だ。
 まおに人を惹き付ける魅力があるとしても、それに惹かれているのは俺で、手を伸ばしたいと思う欲求も俺自身のものだ。

 感じるのも俺で、動けと自分の体に命令するのも俺。
 何より俺が望むから、俺はまおに惹き付けられるんだろう。
 順番を間違えてはいけない。
 いつだって、先にあるのは自分の意志なのだから、それを他人のせいにしてはいけない。

「……ん……?」

 惹き付けられるまま、まおの腋下を舐めると、流石にまおが身じろいだ。
 ちゅっちゅと軽く音を立てて、白く軟らかい肌に吸い付く。

「……おにい、ちゃん?」
「起こしちゃった?」
「……んー何、してるの?」

 まだ意識がはっきりとしていないのか、まおは眠たそうに目を擦っている。

「まおの味見」
「味見ー……? お腹空いてるの……?」
「素材はあまり変わらないのに、まおの体は美味しいよね」
「そうー……? ……えっ、僕の体っ!!?」
「予想通りの反応で嬉しいよ」

 やっと頭が覚醒したらしいまおは、俺の言葉を聞いてあわあわと口を開閉させた。

「もう少し……いい?」

 返事を待たず、俺は再度まおの腋に顔を寄せる。
 鼻を肌に当てて空気を吸えば、まおの香りに満たされる。

「やっ……お兄ちゃん、くすぐったいよぉ……」

 まおの手が拒むように俺の頭を押さえるが力は弱い。
 長く伸ばした俺の前髪が胸にかかるのがこれまたくすぐったいのか、まおの眉が八の字になる。
 そんなまおの表情を横目に見ながら、俺はまた腋下を舐めると、今度は乳腺の辺りに舌を伸ばした。

「あんっ……!」

 上唇と下唇でまおの胸を食む。
 舌を滑らし、そのなだらかな丘の先を目指す。
 小さく上を向いた尖がりを口の中に含めば、まおが震えた。

「んんっ、おにいちゃ、待ってっ」

 どうにかして俺の動きを止めたいのだろう、更に力を込めて両手で俺の頭を押さえてくる。
 けれど俺は味見を続けたい。
 まおの抵抗を無視して、口の中にある突起に吸い付いた。

「ひゃぅっ!? あっ、ぅんんっ、んっ、んっ」

 ちゅっちゅっちゅく……、時折舌を絡ませながら吸い続けると、ぷっくりとまおの乳首が立体感を増す。

「ふっ……可愛い。見て、赤くなったよ、まお」
「も……だめだって……」

 まおを見上げて、顔も赤らめ涙目になった彼の視線をその場所へ誘導する。

「テラテラ光っていやらしいね? まおのここは」
「それは、お兄ちゃんが……っ」
「俺が?」
「う〜〜」
「いえないの? 俺がまおの乳首を吸って舐めたから、まおのここはいやらしく……」
「いわなくて良いから!!!」

 涙目で睨まれても全然怖くない。むしろ可愛い。煽られる。

「もっといやらしくしてあげるね?」
「えっ!? ちょっと…」

 まおに見せ付けるように舌を大きく出して、まおの乳首を舐め取る。

「……っ!」

 舌で乳首を転がしながら、もう片方の乳首を指で抓る。
 何度も何度も繰り返している内に、耐え切れなくなったまおが嬌声を上げた。

「はぅっ、んんっ、あっ、あぁっ、んっ、もう、やめ……て……やぁっ」
「ちゅ……気持ち良さそうだね、まお」
「ちが……うっ……ん、やっだ……そこばっかりぃ……」

 もじもじとまおが太ももをすり合わせる。
 いつの間にか俺の頭から手を離し、俺の上着を掴んでいたまおの手に力がこもる。
 まおの性器が形を持ち始めているのは服の上からでも明らかだった。

「じゃあどうして欲しい? 言ってごらん」
「やぁ……いじわる、しないで……」
「もっと違うところも触って欲しいんだよね?ど こ?」
「ふっ、ぅう……ぼく、の……お、ちん、ちん……も……あぁんっ」

 よく言えました。といわんばかりに、まおが履いているショートパンツの上からまおの中心を指でなぞる。
 それだけでも感じるのか、熱い吐息がまおの口から漏れた。

「すっかり敏感になっちゃって」
「あっ、あん……んっ、ふっ……ぅっ、おにいちゃ、あつい……からだ、熱いの」
「うん」
「もっと……もっと触って……ぼくのおちんちん触ってぇ!」

 ぐいぐいと俺の服を掴みながら、腰をこすりつけてくるまおの痴態に頬が緩むのを感じながら、俺は期待に応えることにした。

「あぁっ! あっ、あっ……ん、あんっ、あぁっ」

 性器を服から取り出し、上下に扱いてあげる。
 先漏れの液で濡れたそこは、手を動かす度にちゅくちゅくと音を立てた。

「気持ち良さそうだね、まお」
「んっ、んっ、気持ちいい……おにいちゃん、きもちいいよぉ……!」

 さっきは否定しようとしてたのに、今ではすっかり俺の手の動きに合わせてまおも腰を動かしている。
 俺の手と自身が擦れるのが気持ち良いのか、まおはそこに夢中だった。
 そんな中くりくりと親指の腹で亀頭を撫でれば、まおが左右に首を振る。

「ぅあっ! あっ! ……だめっ、そこだめっ! ……お兄ちゃんっ、ぼく……イッちゃうぅ」
「いいよ、いっぱい気持ち良くなって」

 瞳を潤ませながら、快感に耐えようとするまおを眺めつつ、俺は口を開けると、舌先に力を入れてまおの腋をなぞった。
 その中央部分の窪みを丹念に舐め上げる。

「はぅっ! んっ、んんっ、おにいちゃん…だめっ、くすぐったい……のとっ、きもちいいのっ、一緒になっちゃ……あぁっ!」

 まおの足が切なげに揺れた。
 相まってまおの背中が丸まる。

「ふっ、ぅ……ああぁぁぁあ!」

 ビクビクと全身で震えると、まおは吐精した。
 荒い息遣いが吐息も相まって耳に届く。

「ん……いっぱい出たね」

 吐き出された精液を手で受け止めると、俺はそれを口に運んだ。

「お兄ちゃん!?」

 とろりと指に伝わるそれを舐める。

「やっぱりまおは美味しいね」
「……お兄ちゃんのエッチ」