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見つけちゃったのね!?Σ(゚∀゚ノ)ノ
ということで(笑)はい、おマケーのページです。
今回はCGにSSを付ける予定で、その筆ならしに勢いで書いたSSです。
内容はオマケの青年の回想になっていますが、制作中のものにつき、実際のもの(青年の口調など)とは異なる点が出てくるかもしれません。
以上をご了承頂いた上で、興味のある方はどうぞ。
ss
よく友人に聞かれることがある。
「ガキのどこがいいんだ?」
その度、俺は考えを巡らさねばならない。
”ガキ”と一重に友人は吐き捨てるが、俺が愛する彼は”ガキ”じゃない。
だとすれば、まず質問が間違っていることになる。
間違った質問に、俺は答えを持たない。
答えがないのだから、何も喋ることは出来ないだろう。
だから黙っていると、決まって友人は溜息を漏らし、何かを諦めたように両手を挙げる。
そしてこの問答は終わるのだ。
「…ガキじゃない」
「あ?」
彼をガキ呼ばわりする奴に、何をどう話したところで全て無駄だろう。
理解出来るはずがない。
なのに、友人は懲りずに、事あるごとに同じ質問を繰り返す。
何故俺は、彼を愛するのだろうか?
そして俺自身がこの問いに行き着くと、あぁ何も友人ばかりが悪いのではないと分かる。
だって仮に、友人が俺に正しい質問をしたところで、俺は答えられないのだから。
何故人は、人を愛するのだろう?
分からない。
気付いたときには好きになっていた。
愛して、しまっていたのだから。
行動の原点をいうのなら、それは生物の本能であり、欲だろう。
けれどきっと友人が求めている答えは、そういったものではない。
何故俺が、”彼”を愛するのか。
初めて、その気持ちを自覚したのはいつだっただろう。
記憶をいくら遡っても、明確な日時は得られない。
何かを可愛いと思う気持ち、それは自然に発生するものだ。
そして何かを欲しいと思う気持ちもまた、自然に発生するものだろう。
だから明確な日時は分からない。
しかし条件を、『一際強い気持ちを感じた瞬間』に絞れば、ある程度は思い出すことが出来るだろうか。
「……っ……」
「…まお?」
数年前に従兄弟の家を訪れたときのことだ。
この頃の俺は、一人暮らしを始めたばかりで、何かと理由をつけては実家よりも近場にある従兄弟の家を訪れていた。
その日も、何かあまりものがあれば夕飯に貰っていこうと、軽い気持ちで従兄弟の家に寄ったのだった。
すると何故かいつも俺を出迎えてくれる従兄弟の姿が見当たらない。
家政婦さんも、この日ばかりは早くに帰ってしまったようだ。
自分の部屋にでも篭っているのだろうかと方向転換しかけたとき、暗いリビングから気配がした。
「まお、いるのか?」
部屋の明かりを付けるよりも、その気配の違和感の方が気になって、薄暗い部屋の中を見渡す。
すると、大きなソファに隠れるようにして、従兄弟が膝を抱えて丸くなっている姿を見つけた。
その微かに震える背中を見て、違和感の正体に気付く。
「まお…?」
声を押し殺して泣いている従兄弟を刺激しないよう、出来るだけ優しい声音を意識しながら呼びかけても、反応はない。
俺がいることに、気付いてはいるのだろうけど……。
「まお、どうした?」
近づいて肩を抱いた瞬間、ようやく、まおはその瞳に俺をとらえた。
大きな目に、零れんばかりの涙を溜めて。
「…っおにぃ…ちゃっ…!」
俺を認めるや否や、まおは力いっぱいに俺の胸にすがり付く。
そしていつもは明るく笑い声をたてる口で、わんわんと泣いた。
俺はただ……彼が落ち着くまで、その小さな体を抱いていてあげることしか出来なかった。
どれだけの間、そうしていたことだろう。
訪れた当初はまだ夕暮れの明かりがカーテン越しに入っていたリビングも、すっかり夜の闇に覆われてしまっていた。
まおも、もう声をあげて泣くこともなく、静かに俺の腕の中にいた。
お互いの吐息と、繰り返される心臓の音だけが体温を通じて伝わる。
そろそろ大丈夫だろうかと体を離そうすると、まだダメだったらしく、更にまおが腕に力を込めて俺にしがみ付いてきた。
別に離れる必要もないか。
そう思い直して、まおの旋毛を見ながら声をかける。
「大丈夫?」
「…うん」
しがみつかれたままなので、吐き出される声と息が体に響いてくすぐったい。
涼しい季節のはずなのに、何故か暑く感じるのは俺だけだろうか。
「何があった?」
「………」
「……俺には、いえないこと?」
「ちがう…」
「じゃあ待ってるから、ゆっくりでいいよ」
「ん…」
流石に体を密着させたままでは喋りにくかったのか、ごそごそとまおが居ずまいを直す。
それでもか細い両腕は、俺の背中に回されたままだった。
「…パパと、ママが……っ」
それだけ言うと、まおはまた嗚咽を漏らしてしまう。
懸命に続きを話そうとするまおに、分かったから大丈夫だよ、と告げると少し強張っていたまおの体から力が抜けた。
”パパとママ”、それだけで察しはついてしまった。
夫婦仲が良くなかったのは前々からだ、そろそろダメなんじゃないかと親戚の間でも話題に上がっていた。
実際、家を訪れてみれば分かる。
大きな一軒家に、まだ幼い子供が一人きり。
共働きならばそれも仕方ないのかもしれないが、家庭を感じさせない整然とした雰囲気というのは如何なものか。
初めてそれを目の当たりにしたときは憤りを覚えたほどだ。
けれど、いじらしいほど寂しさを訴えないまおに、俺がとやかく言えることもなく、出来たのは、ただ一人暮らしを口実に、時間の許す限り様子を見に来てやることぐらいだった。
いつかこうなるだろうとは思っていたが、これほど早くとは意外だ。
まお自身にしてみたら、もっとだろう。
子供なりに家庭不和を感じていたとしても、家族が別れるなんて考えもしないことだったに違いない。
…少しでも泣いて疲れてしまった心と体が癒えるようにと、まおの背中に手を当てる。
その手が優しいリズムを刻み始めると、ほっとまおが息をついた。
「ママは出て行って、別で暮らすんだって」
「まおは、お父さんと?」
「うん…この家で…いつも通り」
「そっか…いつも通りか…」
「うん……」
いつも通り、家政婦が家事をするこの家で一人きり。
今の俺にとっては正に恵まれた環境だが、幼い子供にとって、それはどれだけ寂しい空間だろう。
「パパがね…」
「うん」
「お兄ちゃんに、よろしくって…」
「………」
それは大の大人が、しがない若者を頼る言葉だった。
けれど……頼られているはずなのに、何故だろう。
このときの俺には、激しい怒りしか沸いてこなかった。
…いや、今思い出してもそうだろうか。
「お兄ちゃん?」
「ん…?」
「どうした…の?」
急に押し黙った俺を、まおが不思議そうに見上げてくる。
その不安げな顔を見て、やっと俺は笑い顔を作ることが出来た。
「ん……そう、だな…何だろ、まおのが…うつったかな」
不甲斐ない。
俺は何もしてやれない。
いや、今まで通り、まおと一緒にいることは出来るだろう。
だけどそれだけでは足りないような気がした。
けど、気がするだけで、何の解決策も見出せない自分が…ただ無力で、悔しかった。
そんな自分自身に対しても向けられた怒りや悔しさで、行き場の失った思いが、知らず知らずの間に目から溢れ出ていた。
「大丈夫、何ともないよ」
「本当…?ぼくの、せい…?」
「いや、まおのせいじゃない。決して、そうじゃない」
あぁ、やっぱり自分は不甲斐ない。
ただでさえ不安と悲しみでいっぱいになっている彼に、これ以上何の罪を意識させようというのだろうか。
「まお、俺とは、ずっと一緒にいような」
「うん…!」
「…そうだな、いっそのこと、ここに越してこようか?」
「本当!?……あ、でも大変じゃない?学校とか…」
「ん?そんなの全然大したことじゃないよ。それより、まおのお父さんと話さなきゃな」
何とはなしに、口をついて出た言葉だったけれど、まおの嬉しそうな顔を見ていると後には引けなくなった。
それよりも、俺自身がそうしたいと思う気持ちの方が強かったかもしれない。
ただ親元を離れたかったというだけで始めた一人暮らしだ、多少通学に不便になったところで、問題はない。
…もっと、大事なことがある。
守ってあげよう。
彼が寂しさを忘れて、俺を必要としなくなるその日まで。
傍にいてあげよう。
俺の中で強い気持ちが生まれた日。
きっとあの日がそうだった。
それから…まおと一緒に暮らすようになって、だんだんと思いも大きく積もってきて───。
「お兄ちゃん…!」
思考の海に沈んでいた視界に、まおのドアップが映る。
その瞬間、世界は色を取り戻して、俺に現実をつきつけた。
「……ん?」
「もう!ぼぉっとして!僕、さっきからずっと話かけてたのに!!」
ソファに身を沈めて、学校から帰ってきたばかりのまおの話を聞いている内に、思考が大きくそれてしまっていたらしい。
「あ、ごめん。まおの可愛さに見惚れてた」
「…ぅー…また、すぐそういうこという…」
「だって本当のことだし」
「ぅぅー……お、お兄ちゃんだって可愛いんだからねっ!」
「………それはない」
「えっ…そ、そんなことないよ!」
「いや、ない」
「そんなことないもん!クラスでも、まおのお兄さんって素敵だねって、よくいわれるもん!」
「まお…素敵と可愛いは、同じじゃないよ…」
「お、同じじゃなくても、似たようなものでしょ!」
「いや、違う」
「ぅー…」
「可愛いっていうのはだな、まお。まおのこの大きな目とか、やわらかい頬とか、よく変わる表情とか、まおの…」
「もうーいいよーっ!お兄ちゃん、すぐ僕のことばっかいうんだから…」
「ちゃんとまおが正しく言葉を覚えられるように教えてあげてるんだろう?」
「…だったら普通に”ネコが可愛い”とかでもいいんじゃ…」
「まおで例えるのが一番分かりやすいじゃないか」
「……もういいです…」
愛すべき君の、何が愛しいかだなんて一言では言い表せない。
寂しさを微塵も感じさせないよう明るく振舞う君の姿は、子供だと簡単に言ってしまえるようなものじゃなかった。
そんな気丈に振舞う君の健気さ、実際に笑ったときの君の笑顔の輝かしさ。
その全てを持って、君を愛しく思う。
けれど独り善がりでしかないこの気持ちは、胸にしまって、いつか君が一人立ちするときには、俺が君から与えられた全てを返せるよう、努力するよ。
「まお」
「何ー?」
「可愛いね」
「…もうー!」