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■月のない路 リュシクNOVEL■

 おかしい、と違和感を覚えたのは、ずっと前からだったんだね…。


 今更気付いても、どうしようもないことだけど。
 いっそ僕もラキスみたいになれたら…。
 何も知らないで、ただ一つのことだけを信じて…、その方がよっぽど楽なはずなのに、どう して僕は知ってしまっているんだろう…、どうして今更…!疑うなんて…!! 


 失敗作…?


 僕とラキスに力の差なんて存在しない。
 だって僕らはずっと対等に育ってきたから…。
 だからこそ、際立つことがある。
 僕とラキスの違い…。


 外に出て感じた衝撃は、『初めて』のものじゃなかった。
 どこか懐かしい…、僕が『知っていた』もの。


 ただ真っ直ぐに走るラキス。
 もう真っ直ぐには走れなくなった僕。


 他から見ても、僕とラキスの差なんて歴然だろう。


 きっと、正しいのはラキス。
 間違っているのは僕。




 僕は失敗作になるんだろうか。

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